ネット時代の勝手連と公選法

このブログでは、どの候補を支援するかに関わりなくすべての勝手連を支援するために、勝手連にとって有用な公選法の情報を提供していきます。 (引用・転載フリー。ただし商業利用は禁止です。)

番外編:「きっこのブログ」事件を推理する

 多くの読者のいる「きっこのブログ」が、いま展開中の都知事選の候補Aさんを批判し、Bさんを大好きと述べた記事を掲載し、すぐに削除したことは多くの人が知っていると思います。

 この削除は公選法との関係でどのように解釈されるでしょうか?

 検討資料として使えるキャッシュは←ここにあります。

 断っておきますが、これは特定の候補を批判したり、支持したりする意図ではなく、公選法を解釈する上での実例としてリンクを張っておくものです。都知事選について影響を受けたくない方は読まないでください。

 さて、選挙運動目的で開設されたわけではない日記・評論系のブログであるきっこさんのブログで、「Bさん大好き」と書いたところで、投票の呼びかけをしたわけではないから公選法上の問題はありません。
 また、候補者への批判も問題ありません。
 これらは、特定の候補を当選させるためのものでなければ大丈夫なのです。
 言論・表現の自由によって基本的には保護されます。

 では、なぜきっこさんが当該記事を削除したかというと、私は公選法235条の「虚偽事項公表罪」での告発を恐れたからではないか、と推測しています。批判対象となったA候補について裏がとれていない、あるいは、ネタ元を明かせない情報が混ざっていたのではないでしょうか。

 虚偽事項公表罪の場合、虚偽であるか真実であるかどうか(あるいは、真実であると信じるに足る相当の理由があったかどうか)の立証責任が検察にあるのか被疑者にあるのかは私は知らないのですが、とにかく、民事の名誉毀損裁判と異なり、公選法は刑事事件として国家が強権的に捜査に入ってこられます。

 きっこさんは次のように考えたのでしょう。今回のように一般に公知の事実ではなく、アングラ的な情報を公表した場合には、虚偽でなくとも、真実である根拠(あるいは真実であると信じるに足る相当の理由)をブログ上で示すことができないと、虚偽の疑いがあるという告発をされて警察が介入してくる可能性がある、と。もしかすると、それを臭わせる動きが実際にあったのかもしれません。

 皆さんご存じのように、きっこさんは自分の正体をつかませず、他のメディアが載せていない地下情報のようなものを暴露することを身上としてきました。警察が介入してくると、せっかく隠してきた身元がばれてしまう危険性があります。通常の期間であれば問題なかったのかもしれませんが、公選法というトクベツな法が支配する選挙期間中だと、分が悪かったのかもしれません。

 身元バレの問題ですから、これは、公選法で最終的に有罪になるかどうかよりも以前の段階の話です。

 だとすると、今回の件は、そういう「きっこのブログ」ならでは展開であり、公知の事実や自分の出来事・考えをつづる一般の日記・評論系のブログの場合は、虚偽さえ書かなければ大丈夫という話となります。

 また一つ、都市伝説がひとり歩きしてしまいませんように。

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コートー戦術

 これまで、もっぱら「文書図画」に焦点をあててきました。ネットが文書図画とみなされているから当然なのですが、今回は、文書図画でないものに目を向けたいと思います。

  選挙期間にはいると、選挙運動が解禁になります。選挙運動とは、突き詰めると「特定候補への投票の依頼」のことでした。しかし、例外的に文書図画については、文書図画規制のために選挙運動=投票依頼がやりにくいのでした。

 これに対して、文書図画を用いない手段はかなり自由です。勝手連の場合は特にそうです。

  今回は、大きくわけて街頭演説以外の口頭による活動と、街頭演説とに分けて論じます。

 ◆口頭による活動

 口頭による働きかけは基本的に自由です。候補者の名前をモロ出しして、公然と投票の依頼ができます。

 ですから勝手連は、候補者・確認団体の電話かけを手伝う方法のほか、自分の自宅をベースに電話をかけ、また、対面ではたらきかけることができます。

 この場合、例外的に気をつけなくてはならないのは友人知人の家を訪問する場合です。連続してはしごすると「戸別訪問」とされてしまう危険性がありますので気をつけましょう。

  この例外さえ気をつければ、口頭による投票の依頼は選挙期間中、完全に解禁されています。

 戸別訪問についても、これと区別すべきは署名運動などの訪問です。選挙と関係のない、さまざまな政治課題、社会問題についての署名を集める政治活動なら、選挙期間中でもまったく自由です。

◆街頭演説

 口頭による活動のうち、例外的に規制を受けるのは演説会です。しかし、この規制とても勝手連にはあまり関係がありません。

  勝手連ではなく候補者と政治団体については、個人演説会や政談演説会、街頭演説について場所や回数などの規制があります。たとえば、候補者は選管から渡される「標旗」のそばでないと街頭演説できませんし、政治団体は確認団体にのみ認められる選挙カーのそばでないと政談街頭演説ができません。(逆に言うとこれらのそばならできる。) また、個人演説会や政談演説会は回数の制限を受けます。

 これに対して候補者でも政治団体でもない普通の勝手連になると、選挙目的ではない別の目的で街頭演説をする分にはこうした規制が一切ありません。場所も回数もやり放題です。投票の依頼、呼びかけさえしなければ、候補者の名前も言い放題です。

  ただし、名前の入っていないチラシの配布のところで触れたように、別種の規制として「連呼行為規制」がありますから、選挙カーで候補者の名前を連呼するようなああいうスタイルは避けましょう。それさえ気をつければ勝手連が非・選挙運動目的で街頭演説することは完全に自由なのです。

◆まとめ
口頭での投票依頼は自由!   
○ 電話   
○ 対面 (ただし、戸別訪問は×)

街頭演説   
○ 選挙目的でない勝手連の街頭演説   
△ 選挙目的の演説 (候補者の標旗のそばは可)   
× 政治団体の演説 (選挙カーのそばは可)
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WEBのまとめ表


 文書図画の話題からはなれる前に、WEBについてのまとめを掲載しておきたいと思います。
 なにか表の配置がうまくいかず、えらく下にあるのですが、スクロールしてください。(どなたか場所を動かす方法を教えてください(^。^;)









































開設目的→ 選挙運動 日記・評論 落選運動
投票の呼びかけ × × ×
候補の名前入りの新しい記事 ×?
名前抜きの新しい記事 やりすぎ
更新しない やりすぎ やりすぎ
過去の記事から名前を削除 やりすぎ やりすぎ やりすぎ
丸ごと削除閉鎖 やりすぎ やりすぎ やりすぎ


 ちょっと解説しておきますと、開設目的としては「応援」までなら選挙運動にはギリギリならないと解されます。選挙運動とは、投票を依頼するなど当選のために必要かつ有利な行為のことで、応援するだけならギリギリ言論の自由の範囲でしょう。応援の考え、気持ちとして自分の日記に書いてもおかしくない表現の範囲でおさえるのが得策だと思います。

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OKな紙


◆OKな紙の大別


 これまで述べてきたようにインターネットを文書図画とみなして規制しようとすることからいろいろな無理が生じるわけですが、では、本来の文書図画と言える紙の世界では規制と自由とはどのようになっているでしょうか。


 紙の世界では、わざわざ紙を印刷してばらまいたり道ばたに貼り付けたりすること自体がネットの書き込みに比べて相対的に非日常的な行為であり、日記や評論ではなくて(笑)宣伝目的として推定されやすい特性があります。


  もちろん、宣伝にも大きくわけて、選挙運動目的の宣伝と、それ以外の宣伝(政治上の主義・施策の宣伝や、イベントの宣伝など)とがあるでしょう。これまでの慣例ではこの二つの見分け方の基準は、事実上、候補者の名前が出ているか出ていないかにある、と言っていいようです。


  たとえば、選挙期間中、確認団体は選挙運動目的のチラシを出すことができず、政治活動(政策の宣伝)のチラシしか出せないという規制のもとにありますが、実際には、候補者たちの実名の代わりに「元××」とか「現○○」といった役職名などを用いて、対立候補の政策をこきおろし、自陣営の候補の政策を擁護するチラシを出してもおとがめなしです。市民感覚から言うと、選挙期間中に候補の確認団体がこうしたチラシを出したら、本音ではそれは政治活動目的というより選挙目的ではないか、と感じる人がいてもおかしくはないと思いますが、選挙実務の世界では、「名前が出ていない」という1点で、このチラシは選挙運動のチラシではなく政策宣伝のチラシということになるようです。たしかに、候補を当選させることも政策を実現させるという大目的のための手段だと言えなくもありませんが……。


  というわけで、選挙期間中の紙類は、候補の名前が出ているものと、出ていないものとに大別されます。


 
◆候補の名前が出てくる紙類


 候補の名前が出てくる紙類でOKなものは種類が非常に限られます。選管から規定の枚数の範囲で認められた「選挙はがき」と「法定チラシ」(いわゆる「マニフェスト」を含む)です。これらは配布場所が公選法及び施行令(第109条の6)によって規制されていて、配布できるのは候補者の事務所・個人演説会場・街頭演説場所だけです。ただし、そうは言っても、受け取った人が知人に分け与えることまで候補者側がコントロールすることはできないでしょう。


 この規制にも例外があって、不特定または多数を対象に頒布したり掲示したりするのでなければ、つまり、ある団体の内部でひっそりと内部事務連絡や討議資料を共有する分には、候補者の名前を出しても直ちに違法とはなりません。たとえば、選対や勝手連の内部で、紙(この場合、電子メールも同じ)で「内部事務連絡」や「討議資料」を共有することは、不特定または多数を対象とした頒布にはなりません。この場合は、念のため「内部事務連絡」や「内部討議資料」という語句をつけておく、というのが昔からの知恵のようです。もちろん、この場合も投票依頼の語句が入っていたら直ちに違法となります。まあ、そもそも内部事務連絡や討議に投票依頼の語句が入るわけもないのですが……。


 また、もう一つの例外として、知り合いに別の用事の手紙を出すときに、簡単に支援要請を添え書きする程度は大丈夫のようです。


◆候補者の名前の入っていない紙


 次に、候補者の名前の入っていない紙。これには大別して、選挙期間中、なべて「政治活動を行う団体」が活動を規制される中で、例外的に一定の範囲で政策宣伝のチラシを出すことを認められている「確認団体」が出すものと、そもそも「政治活動を行う団体」ではないためにこうした規制から最初から自由な勝手連・個人が出す紙との二つがあります。勝手連が出すチラシとしては、イベントの案内もあるでしょうし、選挙期間中に焦点となる政策についてのチラシもあるでしょう。


 これらは、候補の名前が入っているチラシと違い、配布場所が制限されていません。どんなところでも配布することができます。 


 やった!どこでも配れる!と喜んだのも束の間、この確認団体や勝手連の「名前抜きチラシ」を配布するときに困るのは、「どうやって誰のことかわかってもらうか?」ということです。なにせ、名前が入っていないのですから。


 ポストに放り込む(ポスティング)場合には、文面で勝負するしかありません。この場合には、候補者の属性のうち一般の人にも広く知られているであろう属性を利用するしかありません。


 これに対して、対面で渡す場合には、口頭で候補者の名前を伝えることには何の問題もありません。ただし、街頭で配布する場合は、街宣車などを使って候補者の名前を連呼すると、連呼行為規制という別の規制にひっかかりますので注意が必要です。一部に、大きな声であろうが小さな声であろうが、連呼であろうがなかろうが、候補者の名前を教えること自体が禁止されているという都市伝説がありますが、これは根拠のない間違いです。おそらく、「確認団体の選挙カーでは連呼はできるが候補の名前を言えない」という制約と、選挙カー・演説場所以外では「連呼自体ができない」という規制とがミックスされて「確認団体のチラシまきでは名前を言えない」へと変転してしまったのでしょう。


 口頭の他にも、のぼりや横断幕を使うということを考える人もいるでしょう。しかし、相手に渡すわけではないとは言え、これは目で見えるため厳密に考えると文書図画規制にひっかかり違法ですので、お薦めできません。選挙の経験者の話を聞くとすぐに逮捕ということはなく、まず注意が来るようですが、少なくとも注意が来たら引っ込めるようにしないと、次にまっているのは逮捕ですので気をつけましょう。



◆まとめ




候補者の名前が出ていないもの


   ○ 確認団体のちらし・ステッカー


   ○ 勝手連のちらし


      ※ただし「連呼行為」は演説会場・選挙カーのみ。



l名前が出ているものでも


   ○ 選挙はがき


   ○ マニフェストなど候補者のチラシ・パンフ


   ※ただし、配付場所は事務所・演説会場・標旗の近く


   ○ 友人への他の用件の手紙に依頼を添え書く。








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更新についての判断基準

 勝手連や勝手連関係者のブログやWEBサイトは告示後も削除・閉鎖の必要はありません。
 悩むのは更新です。

 更新に関連するのは、公選法第146条のいわゆる「脱法文書」という奴です。

第146条 何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職 の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布 し又は掲示することができない。

 おいおいって、感じですよね。候補者本人だけじゃなくて、「推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画」までだめなんて、大きな選挙のときは日本の経済活動がとまっちゃうんじゃないの?と思ってしまいます。

 まず基本としておさえておくべきは、禁止されているのは「
第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として」の頒布・掲示であることです。これらは「選挙運動のために使用する」、つまり、投票呼びかけなど当選を得させる目的の文書です。ですから、目的が選挙運動目的でなければ、名前が載っていても問題ないのです。

 とは言え、ブログやWEBサイトの題名自体に候補者本人の名前が入っている場合は、更新が頒布・掲示とみなされる危険性は否定できません。
 そこで、こういう「冠」タイプのブログやWEBサイトは、安全策をとるなら更新をやめてそのまま、告示前の内容をみられる状態に放置しておくのがいいかもしれません。

 その場合、たまたまブログやサイトの名前に候補者の名前が入っていることが問題なのですから、別のブログやサイトを開設して、投票依頼・呼びかけにならない政治政策の評論やできごと・考えたことの日記などを書くことは全く問題ありません。告示前に、新しいブログ、サイトを旧ブログ、サイトに紹介しておくと一層効果的でしょう。

 「冠」型でないブログやサイトの場合、たとえば日記や政治評論の中に候補者の名前がいっさい入ってはならないのか? またさらに、過去の記事に候補者の名前が入っていていたら、新しく別の記事を書くことができないのか?
 これはまったく新しい領域で、筆者の知る限り、判例はありません。

 市民常識からみて、皆さんはどう感じますか?
 やはり、見たい人が見に来るサイトやブログ、特に、毎日新しい記事が上に積み重なっていくブログを、ばらまく文書や道ばたに貼り付けるポスターと同じ扱いと解釈していることに無理があると感じるのは筆者だけではないと思います。

 特に、推薦人や反対人の名前まで含めて考えると、過去の記事に名前が載っているだけで更新がだめだとすると、すでにできている商業的なサイトやブログのほとんどが更新不能になってしまうはずです。そんな非現実的なことあり得ません。本当に日本の経済活動が止まってしまいます。

 実際には、悪意のないたくさんの一般市民がどのように行動するのかで、法解釈が現実をおいかけていくことになる、という展開を想像するのは私だけでしょうか。

 候補者の名前が登場するとしても政治評論や日記を書くこと、あるいは、名前が登場しない記事を新しく書くことが選挙違反とは思えないという方は、警察が違反扱いするとしても通常、いきなり検挙ではなくまず警告をするのが普通ですから、連絡できるメール・アドレスを表示しておくというのも手でしょう。

 ところで、もろに候補者の名前を冠しているブログ、サイトであっても、興味深いのは落選運動の場合です。
 「
第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として」ということは、当選させることを目的として、ということを意味します。だとすると、候補者の名前は出ているが、全く正反対に、落選を呼びかけているブログ、サイトであれば、「脱法文書」にはあたらない、と解釈するのが素直、自然と考えられます。もし検挙されるとしたら、当選させるための活動をしたという容疑で検挙されることになるのですから……

 なお、ブログで一番ややこしいのが、コメント欄やトラックバックです。これはブログの開設者が使うものではなく、訪れた別人が使うもの。もし更新することが違反になるとしても、コメント欄に書いたり、TBした人になるでしょう。共犯になるかというと、共同実行の意思の連絡がない限り共犯にはなり得ません。

参照http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B1%E5%90%8C%E6%AD%A3%E7%8A%AF

 コメント・TBした側の人についても、その書き込みの中に候補者の名前が入っていない場合、それでも候補者の名前入りの文書図画を頒布・掲示した罪に問うのか? 無理があると思われますが……。コメント欄やTB欄を閉鎖するかどうかは、上記を踏まえて各自が決める必要があります。閉鎖しないことで設置者本人の罪を問うことには無理がありますから、訪れる人に対する親心、親切心という観点から(笑)
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